雪月花 隅田

雪景色の隅田河畔を描いた作品で、月の淀川、花の吉野と共に選ばれた三名所の一枚です。画面中央の森の中には木母寺と料亭「植半」、手前には水神社と呼ばれた隅田川神社を配し、厚い雪を積もらせています。当時はいずれも雪景色の名所と言われました。画面上下の濃い藍色が、夜が明け切らない早朝の印象を与えていて、静寂さとそこはかとない郷愁を感じさせる作品です。そして、静かな冬の朝の中にも舟で網を仕掛ける人や雪の中を行く二人の人物が描かれ、左下の都鳥らしき鳥たちもアクセントとなっています。文政末から天保初(1830)年頃の作品です。